井口佳世子 ヴィクトリア会 ◆ニードルポイントの楽しみ◆
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ニードルポイントの楽しみ

ニードルポイントは、格子に織られた粗いキャンバスに図柄を描き、ウール糸や刺しゅう糸を使って、1目1目刺していきます。1目が小さいので、花や植物だけでなく、風景や人物、動物、昆虫などの細かいものまで表現することができます。二一ドルポイントがほかの刺しゅうと異なるのは、模様部分だけでなく、そのまわりまで糸で刺しうめてしまうことで、これを地刺しと呼びます。単調で根気のいる仕事のようですが、忙しい現代においては糸を刺す人の心を落ち着かせ、穏やかな気分にさせてくれる貴重なひとときでもあるのです。

刺しゅうをするうえで大切なデザインの題材の多くは、日々の暮らしの中から生まれました。私が暮らしていたロンドン郊外の家には広い裏庭があり、季節になるとリンゴやナシ、ヴィクトリアンプラムが実り、近くの森からはリスが遊びに来ました。お隣の老夫婦は天気のいい日には庭にテーブルを出し、庭の草花を愛でながら朝食や午後のお茶を楽しんでいました。こうした環境に暮らす人にとって、自然は生活の一部なのです。

配色の楽しみ

ニードルポイントではモチーフと地刺しの色合わせは、デザインのイメージを決定する大切な作業です。図柄が18世紀のものであっても、それをいかに現代生活に合う、個性的で人の心に何かを訴える表現ができるかどうかは、色選びにかかっているのです。

地刺しの色に対して、美しく輝く色、図柄の中で大切なアクセントとなる色、ときには自分の想像をはるかに超えた色合わせに出会うこともあります。色のバランスに注意して、お互いの色が微妙にブレンドするように配色に工夫を凝らします。同じモチーフでも、色使いによってこんなにイメージが異なります。
アカンサスの葉

流れの美しいアカンサスの葉は、幻想の中で美しく目に残る色をイメージしてデザインしました。葉脈の色を薄くしたために、葉に動きが出て、生き生きとした表情に仕上がりました。
copyright Kayoko Iguchi Victoria-kai
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